【サイバーパンク2077】巨塔が倒れた日

2023年8月初頭、ひとつの出来事が歴史の流れを変えた。血で血を洗う第四次企業戦争の最中に起こったにもかかわらず、世界中のメディアが連日この話題に群がった。彼らを責めることはできない。あるテロリストグループが核爆弾を爆発させ、アラサカ・タワーを吹き飛ばしてし まったのだから。テロリストが犯行を予告したタイミングはあまりに遅く、タワー従業員の中には避難が間に合わなかった者もいた。爆発による直接の死傷者は1万人以上にのぼり、その他にも数え切れない人々が放射線を浴びて命を落とした。21世紀最大のテロ事件はどのようにして起こったのか?この大惨事の裏には何者がいたのか?その答えを探るには、まずは当時の時代背景を理解しなければならない。

2020年代初頭のナイトシティは社会不安に揺れており、反企業感情がかつてないほどの高まりを見せていた。そんな無法地帯と化したナイトシティの中心にあったのが、アトランティスというクラブだ。このクラブは時の権力者に対する反逆者たちの拠点として機能していた。ここで言う権力者とは主にミリテクやバイオテクニカといった巨大企業を意味するが、なかでもナイトシティで最も強い影響力を持っていた兵器会社、日系財閥のアラサカは、のちに特別な地獄を見ることになる。企業は街の未来を乗っ取り、人々を消費者という名の奴隷に変えただけでなく、皮肉にも資本主義が最も愛した2つのもの、すなわち自由と選択を奪ったーーーそれがアト ランティスに出入りしていた人々の訴えだった。彼らは自らをエッジランナーと名乗り、企業が打ち立てた秩序に反旗を翻した。独自の自由を求め、当時の体制への反対を表明したのだ。しかし、彼らの言う「体制」を意義ある形で変えようにも、それを平和的に実現する手段を奪われていた彼らは、より急進的な自己表現の方法に手を伸ばす。そうするうちに彼らは暴力と無縁ではいられなくなっていったのだ。


上記の文章は、サイバーパンク2077のゲーム内で読める情報『巨塔が倒れた日』の全文を掲載したものです。